コラム
原発は本当にリスク管理できるのか

 最近チェルノブイリ事故の報告書を見直していると、当時の自分の書き込みを見つけました。ページの片隅には「リスク管理をどうするか。想定の範囲は」とありました。その報告書は核化学者で大阪大学の久米三四郎氏のもので「チェルノブイリ事故の全貌ー原発事故はどのようにして起こったのか」というものでした。25 年前のその報告書は原子炉の暴走事故の経緯を分析し、事故の最大の原因を「重大事故は起こらないという想定」にあったとしていました。チェルノブイリは人的ミスの連鎖、福島第 1 の場合は地震と津波という違いはありますが、その深刻な事故の背景には共通して「重大事故そのものを想定しない」というリスク管理の放棄がありました。
 リスクとは予見される損害とその蓋然性(発生確率)の積であらわされます。自動車保険など各種の保険は、そうしたリスクをお金で換算し保険料の徴収と保障の給付をおこなうものです。原発事故が単なる『リスク』であれば、同様に被害予見と発生確率で管理可能です。しかし、事故によって半径何百キロもの土地が汚染され、何十年もにわたり何万人もの健康被害が発生することを考えると、チェルノブイリや福島の惨状に対して『リスク管理』という言葉はあまりにも空疎ではないでしょうか。25 年前の自分の認識の不明を恥じるばかりです。
 電力会社や政府は今回の事故を教訓にリスク管理の強化を打ち出し、耐震構造の強化やストレステストなどを実施しようとしています。しかしひとたび甚大な事故を起こせば環境と人命に致命的なリスクをまねく原発事故。その最善のリスク管理は原発をなくすということではないでしょうか。

(2011年12月)