困ったときのヒント「労働」
- 定期健診だけではない特殊な健康診断
- 間違えやすい時間外(残業)手当の計算
- 労災保険と自賠責保険
- 現場労災と事務所労災
- 突然の賃金の引き下げ
- 週40時間労働と変形労働時間制
- 基本手当日額とは
- 大丈夫?「最低賃金」
- 「解雇」トラブルになる前に
- 派遣労働者の労災
- 定年退職なのに、解雇扱い?
- 就業規則の変更はしましたか?
- 育児休業の再取得申請はできるのか?
- 従業員がケガをしたら、労災?健保?
- 残業・休日出勤には36協定を!
- 労災保険の特別加入
- 介護休業給付の適用日数は?
- 自己都合と給付制限
- 健康診断受けずに傷病が発見された場合は使用者責任が問われる場合も
- 育児休業給付を受けて雇用継続
- 従業員10名以上は就業規則が必要
- 介護休業に雇用保険から給付が
- 業務中に交通事故にあったら
- 不況下、従業員の賃金を下げたいが・・・
定期健診だけではない特殊な健康診断
労働基準監督署より健康診断の結果を報告して下さいと通知が来たがどうしたらいいのかと相談がありました。
相談者の会社は塗装業務をしており、有機溶剤を使用しています。有機溶剤のうち54種類(トルエン、キシレン等)は人体に有害なことが明らかになっています。これらの溶剤を5%以上含むものを取り扱っている場合は、種類別に合わせた検査項目の特殊健康診断を、6 ヶ月ごとに 1 回実施することが法律(有機溶剤中毒予防規則29条 )で義務付けられており、その結果を監督署に報告しなければなりません。
事業所が実施しなければならない検診は年1度の定期健康診断だけではありません。上記の有機溶剤の他にも、鉛・石綿・電離放射線・特定化学物質を取り扱っている場合にも、それに合わせた検査項目の健康診断を行い、その診断結果を報告する必要があります。
人体に有害と判断されているものを業務で使用しているのですから、定期的に従業員の健康をチェックし、それを守るのも会社の義務になります。
相談者には検診に対応する病院を紹介するとともに、監督署への報告をサポートしましした。
(2011年3月)
間違えやすい時間外(残業)手当の計算
組合員企業から監督署の調査があり、残業手当について指摘を受けたと相談がありました。指摘の内容は「残業手当の計算に誤りがある」というものです。
時間外手当の計算で多い間違えが、基本給だけを計算の対象にするというケースです。時間外手当の対象にならない賃金項目は(1)家族手当、(2)通勤手当、(3)別居手当、(4)子女教育手当、(5)住宅手当、(6)臨時支給賃金(結婚手当、私傷病手当、退職金など)、(7)1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金になります。この7項目に入っていない諸手当(役職、食事、資格など)は時間外手当の対象になります。
基本給と諸手当の合計金額から1時間あたりの単価を求め、それに時間外料率をかけて求めます。ただし月給、日給、時間給で1時間単価の計算方法が違うので注意が必要になります。
| 時間外労働 | 法定8時間以上の労働 | 25%以上 |
| 1ヶ月の残業時間が60時間を超えた場合。ただし中小企業については除外する猶予措置あり | 50%以上 | |
| 深夜労働 | 22時から翌5時の労働 | 25%以上 |
| 休日労働 | 法定休日 4週4日内の労働 | 35%以上 |
| 休日+時間外労働 | 35%以上 | |
| 時間外+深夜労働 | 時間外(25%)+深夜(25%) | 50%以上 |
| 休日+深夜労働 | 休日(35%)+深夜(25%) | 60%以上 |
(2011年2月)
労災保険と自賠責保険
従業員が仕事中や通勤途中に事故にあった場合、治療費は労災保険へ給付請求することになります。しかし、加害者のいる自動車事故の場合は、自賠責保険や任意保険へ請求することも可能です。原付を含むすべての車両は自賠責保険への加入が義務づけられています。自賠責保険には被害者の救済と加害者が負う経済的負担を補填するという目的があり、労災保険にはない慰謝料が支払われるなど、労災保険とは内容が異なっている部分があります。また、治療費、休業補償および慰謝料については、支払限度額の120万円の範囲内で支払われます。
相手方の自賠責保険や任意保険で補償を受けるか、労災保険で給付を受けるか、もしくは両方から受けるか(両保険で調整があります)は被害者が選択できることになっています。ただし、厚生労働省の通達で、労災保険より自賠責保険を優先するようされていますが、これは役所間のとりきめで、申請者はそれに左右されるわけではありません。また、自賠責保険の場合は過失割合によっては支給額が変わることもあります。
労災保険の給付は第3 者のいる自動車事故の場合には基本的に「人身事故」による負傷が給付の対象になりますが、「物損事故」で届出た場合でも、相手側の同意が得られれば給付は受けられます。
ひき逃げされた、かなりの重傷で治療が長引きそうだ、相手側が保険に加入していないなどの場合は、労災保険での治療を先行させます。
現場労災と事務所労災
建築関連のA社から、帰宅途中の従業員がケガをしたので通勤災害の申請をしたいと相談がありました。
建築関連企業は工事現場などの現場労災に加入しています。しかしこの現場労災は会社(事務所)への通勤、または会社(事務所)から現場への移動に対しては適用されません。労災には 業務災害と通勤災害があり、業務災害は仕事中にケガ、通勤災害は通勤中など業務以外でケガをした場合に適用されます
。
現場労災は工事現場内で業務中に発生したケガなどに適用されます。また、自宅から直接現場に直行、直帰した場合のケガなどにも適用されますが、手続き上は通勤災害ではなく、業務災 害となります。
今回の相談のケースでは、現場の仕事が終わった後にいったん会社に戻って日報等の業務についており、その後帰宅するというもので、残念ながら会社に戻った時点で現場労災の適用範囲か ら外れています。
会社には、通勤災害の適用はできない旨を説明するとともに、業務の実態から考えて、現場労災とは別に事務所での労災適用をおこなうようすすめ、会社もそのようにすることになりまし た。
突然の賃金の引き下げ
得意先から取引停止をいいわたされることもめずらしくない昨今、コストダウンのため従業員へ突然の賃下げをいいわたす企業もあります。しかし、そのことがトラブルを招くケースも多々あるので気をつけましょう。
賃金は従業員との個別契約=労働契約によっていると考えられます。ですから会社側が一方的に契約内容を変更することはできず、従業員個々との合意が必要です。また賃金規定が就業規則などで定められている場合は、その改定が必要になってきます。ただ中小企業の場合、就業規則が無い会社も多く、その場合でも、
- 賃金を引き下げる原因に必然性・合理性がある
- 従業員に状況を説明し、説得、了解を得ている
- たとえ、引き下げに同意しない者があったとしても、一律に「引き下げ」を行なっている
という点できちんと手続きがふまれている必要があります。
就業規則に賃金規定など賃金の計算の根拠が記載されている場合、事業主が勝手に賃金を下げたりすることはできません。賃金の引き下げは労働条件の「不利益変更」となり、労働基準法など法律に基づききちんとした手続きをふまないと法令違反になります。また、賃金等の労働条件は事業主と従業員の「雇用(労働)契約」に基づいています。ですから、「不利益変更」については双方の合意が必要であり、少なくとも従業員の過半の同意が必要です。
不況のもとで、底の見えない経営環境の急速な悪化が進んでいます。やむをえず従業員の賃金など労働条件の変更をよぎなくされる事業所も多数あります。このようなときこそ大切なのが、事業主と従業員の「信頼」をいかにまもるかということです。中小企業の場合、よりよい人材をいかに確保するかは不況下でも重要な課題であり、従業員の「やる気」をいかに引き出すかは少数精鋭である中小企業のより重要な課題です。そのため、賃金の引き下げなどの労働条件の変更にあたっては慎重に、かつ従業員の同意をえるように最大限の努力を払うようにしましょう。
週40時間労働と変形労働時間制
助成金等の申請で、「週40時間労働が守られていないのでは」と指摘されるケースがあります。経営者としては、「正月や盆休みなどを計算すれば年間休日は基準を満たしているはず」 ということらしいのですが、それだけでは週40時間を遵守していることにはならないのです。
労働基準法第32条では、1日8時間、週40時間を越えて労働をさせてはならないと定められています。週40時間労働となるには、1年間の総労働時間が2085時間までとなります。1日8時 間労働の場合、1年間の労働日数は260日までとなり、日曜・祭日・年末年始・盆休みなどカレンダー上の休日だけでは足りません。そこで多くの事業所では隔週土曜日を休日にして、労働 日数を260以内にしています。
実はこれでは週40時間を完全にクリアーしているわけではありません。土曜が休みでない週については40時間を超えているからです。こうしたときには、「1年単位の変形労働時間制」の協定を 従業員の代表者と交わし、労働基準監督所へ提出します。
助成金等の申請を考えている場合、週40時間労働をクリアしているかを確認しておきましょう。
週40時間判定式
1日の労働時間×年間の総労働日数÷365日× 7日= 1週間の労働時間
基本手当日額とは
雇用保険で受給できる1日当たりの額を「基本手当日額」といいます。この「基本手当日額」は原則として離職前6か月の給料(賞与等は除きます)の合計を180(30日×6 ヶ月)で割って計 算した金額(賃金日額)のおよそ45 ~ 80%となっており、賃金の低い方ほど高い率となっています。基本手当日額は年齢区分ごとにその上限額が定められています。
【平成20年8月1日現在】 30歳未満 6,330円、30歳以上45歳未満 7,030円 、 45歳以上60歳未満 7,730円、 60歳以上65歳未満 6,741円。
大丈夫? 「最低賃金」
パートタイマー従業員を雇用する際に注意しなければいけないひとつに賃金があります。各都道府県単位で地域別最低賃金が設定されており、その金額以下の賃金で雇用する事はできません。
最低賃金法が平成20年7月に改正予定となっており、その改正で最低賃金が守られていない場合の罰金が、該当従業員ひとりあたり上限2万円から50万円へと大きく変更されます。
現在の大阪府最低賃金は731円(時給)。この他にも産業別最低賃金もあり、特定業種ごとに設定されています。 パート従業員の給与を時給で支払う場合は最低賃金以上であれば問題はありません。
日給もしくは月給で支払うときには注意が必要で、それぞれ時給換算をし、最低賃金と比較することになります。対象となる賃金は、基本給と諸手当(精皆勤手当、家族手当、通勤手当、時間外手
当は除外されます)の合計金額から時給換算します。 フルタイムパート従業員で月給12万円前後の場合、時給換算すると最低賃金以下の可能性があります。
今現在雇用している従業員についても、賃金額を調べて、最低賃金を下回っていないか確認しましょう。
解雇トラブルになる前に
事業主と従業員、「会社」というひとつの船に乗っているわけですから、できるだけ協調・協同しながらやっていくのが理想です。しかしうまくいかないケースもあります。 雇用問題でできるだけトラブルにならないために、解雇できるケースとそうでないケースをとり上げてみました。
絶対解雇できないケース
1.業務上の負傷・疾病による休業期間、その後30日間。
2.産前産後の休業期間、その後30日間。
3.女性への差別取扱い。
4.解雇の実質的理由が以下の場合。
・労基法・労働安全衛生法違反を労基署等へ告発。労働委員会への申立。
・労働組合の結成、加入、正当な活動。
・労働者の国籍、信条、社会的身分。
・婚姻、妊娠、出産、育児休業、介護休業。
・労働協約・就業規則上、解雇について明記した事由以外の事由での解雇。
解雇には客観合理的理由が必要
解雇は大きく分けて「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3つがあります。「懲戒解雇」は懲罰的な意味での労働契約解除で、「整理解雇」は業績不振などの理由から
人員整理を目的としたものです。この2つは解雇の理由が比較的はっきりしていますが、「普通解雇」は労使の信頼関係の破綻が契機になることが多く、双方の言い分に違いがあるケースが多く見られます。
解雇にいたる具体的ケースには、労働能力面に問題があるとき、健康上に問題があるとき、勤務態度の不良、協調性を著しく欠くとき、などが考えられます。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」(労働契約法16条)と法令で定められており、そうした事実があったとしても、すぐに解雇の理由となるわけではありません。
まず「就業規則」に解雇事由が明記されていることが前提です。裁判の判例でも明記がない場合は解雇が無効とされる場合がほとんどです。
ケースごとの対応
「労働能力面に問題」があるケースは能力不足が著しく、改善指導など使用者が最大限努力した場合や、特殊技能や職種を指定して雇用した場合などは解雇事由になります。
「健康上に問題」があるケースは、原則として業務上のケガや病気がもとで療養するために休んでいる期間及びその後30日間は解雇出来ませんが、業務上以外の傷病でもまったく就労が不可能かどうか、職種変更などで就労が可能ではという検討が前提条件になります。
「勤務態度の不良」のケースは、勤務態度の不良の事実を記録し、出勤督促など文章での注意・勧告をおこない、業務遂行に具体的な支障が生じていることを明らかにすることが必要です。
「協調性を欠く」ケースは、トラブルなどを記録するとともに、改善のための勧告や従業員間の話し合いなどをおこなう必要性があります。また職種の変更など使用者の努力が必要です。
以上のように「客観的に合理的な理由」がある場合でも、解雇には解雇予告や解雇予告手当など法律にそった手続きが必要なのは当然です。
派遣労働者の労災
派遣会社(B社)から労働者を派遣してもらい仕事をしてもらおうかと思っています。社会保険などは派遣会社で加入しています。実際に仕事するのは会社(A社)だから、労災は会社の方で加入しないといけないのかという相談がありました。
労働者派遣法第 44 条では、労働基準法のうち、災害補償に関する部分は派遣元が補償責任を負うこととしています。
すなわち、たとえケガをしたのが派遣先A社であっても、労災の手続(治療費、休業補償)に関する事は派遣元B社でしなければいけないということです。しかし、安全衛生管理に関しては派遣先A社の責任になりますので、「死傷病報告書」はA・B両社でそれぞれ提出しなければいけません。
もし派遣元B社でなく労災の手続きをA社でおこなった場合には「労災かくし」と判断されて書類送検されるケースもあるようですのでご注意下さい。
労災の手続は、ケガをした状況により手続方法も違い複雑ですので、まず相談して下さい。
定年退職なのに、解雇扱い?
従業員が60歳になり、定年で退職することになりました。失業保険に加入していたので手続きに職業安定所に行ったところ、定年扱いはできない、解雇扱いになると言われました。
平成18年4月より高齢者雇用安定法の改正がり、高齢者の継続雇用確保が義務化され、①定年引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年制度の廃止、いずれかの措置を設けなければならないことになりました。
相談者の会社の就業規則では定年60歳。しかし60歳以降も雇用しなければならない上記の制度を設けていませんでした。19年4月現在では63歳までの雇用確保が義務付けられています。それを60歳で退職させたので、職業安定所では定年を認めず、会社の都合で退職させたとみなされたのです。
今回の場合も、就業規則で定年60歳、定年以降も65歳まで嘱託、パート等で再雇用する制度を定めていれば、本人が雇用継続を希望せず、60歳定年希望したということで、解雇扱いにはなりませんでした。60歳定年だけを定めている事業所はまだまだ多く、就業規則の変更が必要です。
就業規則の変更はしましたか?
年末年始にかけて、就業規則の変更相談が数件ありました。
就業規則は、常時10名以上の従業員を雇っている場合、作成し労働基準監督署に届け出しなければいけません(労働基準法第89条)。
平成18年4月より定年の延長など高齢者の継続雇用を段階的に引き上げることを義務付ける法改正がありました(現在62歳。4月より63歳)。多くの事業所では就業規則の定年項目は60歳になっていると思われます。しかし変更をしていなかった場合、会社が不利になる場合があります。例えば失業保険の離職理由です。60歳定年退職
という理由での退職はできなくなります。例え就業規則に60歳定年と書いてあっても継続雇用の項目がなければ認めてもらえず、60歳で「解雇」したことになります。
この他にも育児・介護休業、勤務時間の短縮やセクハラの防止など、昔に作成した時にはなくても、今は時代には入れておいた方がいい、また修正が必要と思われるものがあります。ぜひ一度、就業規則の見直しをしてみて下さい。また就業規則を作っていない事業所は作成するようにしましょう。就業規則等の内容に関しては事務局までお問い合せ下さい。
育児休業の再取得申請はできるのか?
社会保険の育児休業制度に、子供が1歳(3歳まで延長可)になるまでの育児休業期間について、職場復帰するまでの保険料を免除してくれる制度があります。
出産して一定期間の後、職場復帰を果たし、育児休業終了を届けたが、ふたたび育児休業を取得しなければいけない事態になってしまった。保険料の支払ができないが再度申請はできないかという相談がありました。
再度の保険料免除申請はできないように思われがちですが、子供が1歳になるまでの申請に限り、再度免除を受けることができます。
例えば、子供が生まれて4ヶ月目で育児を母親等に頼んで職場復帰したが、2ヵ月後に母親が病気になり子供の面倒をみられなくなり育児休業を再び所得することになった。この場合であれば子供はまだ1歳になっていないので、再び申請すれば保険料の免除を受けられ安心して育児に専念することができるようになります。
雇用保険の育児休業給付に関しては、育児を任せた人が配偶者であれば、再度申請すれば受給できます。が、上記の例の場合は母親が育児をしていたので再度受給用件にはあてはまりません。
従業員がケガをしたら、労災?健保?
従業員が業務中にケガをした場合、あるいは通勤途中でケガをした場合、労働保険(労災保険)に加入していれば治療費などは労災の方に請求できますので、基本的には自己負担はありません。業務中のケガでは健康保険は適用されないことになっています。
A社のBさんは旋盤作業中に切粉が指をかすめて負傷してしまいました。病院にて治療しましたが労災指定病院ではなかったので健康保険を使って治療しました。その後、休業補償の相談にこられた時に労災保険を使っていない事が判明しました。
Bさんの場合、健康保険で既に治療費を払っています。労災保険を使うためには治療費の3割分は既にはらっていますが、残りの7割は社会保険が治療費をはらっていますので、この分を社会保険に治療費返還しなければなりません。つまり治療費を全額負担の上体にしてから、労災保険の方に治療費全額を返してもらう手続きをしなければなりません。一時的にせよ金銭の負担も大きく、事務的な負担も大きくなります。
Bさんも治療費を全額払い、治療費の請求をして無事に労災に切り替え、休業補償も請求する事ができました。
もし従業員がケガをした場合、たとえ切り傷等の小さいケガの場合dめお業務中のケガならば、会社の方で病院に行かせる前に「業務中のケガです、労災でお願いします」と言うよう、ひとこと伝える事を忘れないようにしましょう。
残業・休日出勤には36協定を!
最近、労働基準監督署の監督官が事業所に赴き1週40時間と時間外協定の有無や割り増し賃金などの調査を行っています。
労働基準法は、労働時間の上限を法定労働時間として、1週40時間、1日8時間までとしています(労働基準法第32条)。
また、1週間に1日または、4週間に4日の法定休日を設けて、法定休日の労働を禁止しています(労働基準法第35条)。
使用者が労働者に対して、法定労働時間を超えて労働させる場合や法定休日に労働させる場合や法定休日に労働させる場合には、労使が書面で協定を締結して、労働基準監督署長に届け出なければなりません。
この労使協定は、労働基準法第36条によるものなので、三六協定と呼ばれています。使用者は三六協定によって、法定労働時間を超えて時間外労働をさせたり、休日労働させることができるのです。これは、労基法に違反になります。
ただし、この協定の締結は、時間外や休日に労働させるための協定で、これに対する割り増し賃金は当然支払わなければなりません。時間外労働には25%以上、休日労働には35%以上の割り増し賃金を支払います。
割増賃金の基礎になるものは、基本給、住宅手当、地域手当、役付手当、精皆勤手当等です。
労災保険の特別加入
トビ土工工事業の方から、最近元請から就業規則の提出を求めてきたり、労災保険の特別加入をしているかどうかの問い合わせがありました。
最近、関中協にも同様の問い合わせがきています。請負代金を引き下げておきながら、金のかかるようなことを求めてくるのは納得がいかない面もありますが、労災保険の特別加入をすることはいいことです。
ふつう中小企業主の場合、労働者以上に働いていながら、仕事が原因で怪我をしても労働者でなければ労災保険から給付がありません。しかし関中協のような労働保険事務組合に事務委託すると中小企業主も労災保険に特別に加入できます。こうしておけば治療費は無料になりますし、休業補償、障害補償、遺族補償もあります。業務上の傷病では原則社会保険の健康保険、国保は使えませんから、ぜひとも特別加入するようにして下さい。
元請が、特別加入を厳しく言ってくる背景には、中小企業主、一人親方の重大災害における損害賠償請求の問題があります。元請の管理のミスで中小企業主が大怪我をしてしまい、損害賠償の裁判が起きている事例もあります。
また、元請としては特別加入するような事業者は安全問題についても意識が高く、安心して仕事を任せられるという考え方があるようです。
介護休業給付の適用日数は?
雇用保険の助成金制度に介護休業給付があります。この制度は配偶者・子・父母・配偶者の父母と同居している被保険者の祖父母・兄弟姉妹を介護するために介護休業を取得した65歳未満の雇用保険被保険者に対して、最大3ヶ月の休業給付が支給されます。
父親の介護をする事になったが、長期間の休業はできず、兄弟で数日交代の介護をする事になったのですが、介護給付は適用になりますかと相談を受けました。
支給要件は、介護休業開始日から1ヶ月単位で土日を含めた20日以上の休業があることとなっていて、どうしても出勤しなければならない日があっても、10日以内の出勤に抑えれば必然的に休業日数が20日以上になり、介護休業給付を受けられます。ここで注意しなければいけない事は、例えば1ヶ月休業をとり、1ヶ月出勤して、また1ヶ月休業する場合、介護対象者が同じ人の場合は、初めての介護休業のみが支給対象となってしまい、職場復帰後の休業は対象にならなくなってしまいます。そのような時は最初に3ヶ月間の介護休業届を出しておけば隔月にとっても問題ないでしょう。
自己都合と給付制限
雇用保険の失業給付は、自己都合で離職した場合、通常は3ヶ月間の給付制限がかかります。しかし「正当な理由」が認められれば給付制限がかからないときがあります。
例えば賃金遅配、過度の時間外労働が続く場合等の労働条件に係わる問題の理由で退職した時です。
このような事態になってしまった場合、離職理由を記入するときに一身上の都合で届いてしまいがちですが、退職者が失業給付の手続き面接の場で、そのようなことがあったと申告して、職業安定所から離職理由の確認問い合わせがあり、離職理由の変更となってしまいます。
このような事がないように、離職票における離職理由は退職者からよく聞いておき、その内容を詳しく書いておく事が重要です。
健康診断受けずに傷病が発見された場合は使用者責任が問われる場合も
健康診断には、大きくわけて一般の健康診断と、特別な項目について行う健康診断(特殊健康診断)があります。前者は、仕事の種類にかかわりなく、すべての事業所が労働者の雇いれ時及び雇いれ後1年以内ごとに1回、定期に行わなければならないものです。後者は、有機溶材など有害物を使う事業所が行うものです。
健康診断は最終的に労働者の協力がなければ遂行されないわけですから、何が何でも労働者に健康診断を行わなければ法違反になるというのでは事業所に酷といえますが、しかし労使の都合にかかわらず労働者が1年以上健診を受けなかった場合、その後重度の傷病が発見された場合、事業所は責任を負わされるようになります。
健診は、労働者の健康を守り、業務を円滑に遂行するためにも必要不可欠であるといえます。ぜひ健康診断を受けましょう。
育児休業給付を受けて雇用継続
先日、妊娠による退職のため、失業保険の受給期間延長の手続きをするにはどうしたらいいのかと言う相談を受けました。
妊娠退職をする前に、雇用保険の助成金に「育児休業給付」という制度がありますので再検討されてはいかがでしょうか。これは労働者が育児休暇を取得しやすくするとともに、その後の職場復帰を緩助、促進することで職業生活の継続を支擾する制度で、満1歳末満の子を養育するための育児休業期間中に支給されます。支給金額は休業前の賃金月額に30%を乗じた額が支給されます。さらに育児休業給付が終了し、職場復活して6ヶ月後に「育児休業者職場復帰給付金」として休業前の賃金月額の10%に育児休業給付の支給月数を乗じた串が支給されます。
相談者はこの育児休業給付の制度を知らず、この話をするとその離職予定者に説明して検討してみるとのことでした。
この助成金の利用者は少なく、男性でもこの育児休業給付は適用されますし、実子・養子も問われません。この他にも「介護休業給付」という助成金もあります。ぜひそういう制度もあるという事を覚えておいて下さい。
従業員10名以上は就業規則が必要
最近、労災事故や雇用問題、助成金の申請などで、就業規則とはどのようなものかとよく質問されますので解説します。
就業規則は、事業場での就業上の規律や株序、労働条件などを、使用者が具体的に定めるものです。労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業場の使用者に対して、就業規則の作成と労働基準監督署長への届け出を義務づけています(労基法第89条)。
尚、10人以上というのは、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイト、嘱託社員などを含めた人数です。もし就業規則が、法令や労働協約に違反する場合には、労働基準監督署から変更するように命令されます(労基法第92条)。
就業規則や労働協約のない事業所では、労働契約は、労基法を下回らない範囲で、労働者と使用者の合意によって労働条件を定めることができます。もし、その契約の締結や解除などで、労基法に規定されていない事項がある場合には、民法が適用されることになります。又これらの法律で規定されていない部分には、裁判例や労使慣行が効力を持ちます。
介護休業に雇用保険から給付が
介護休業給付については平成11年4月より始まり、まだ2年に満たない制度であまりご存知でない方も多いと思います。
これは家族を介護するために休業を余儀なくされたときに、休業開始前賃金の40%相当額が支給される制度です(但し3ケ月間)。この制度については昨年末に会員さんより「別居している父親が病気になり息子である従業員が、その介護のために職場を約1ケ月休んだが、雇用保険から何か給付があるのでは?」と相談がありました。早速職業安定所と連絡を取り合いながら、現在保険適用の手続き中でもあります。
従業員の雇用保険への加入や喪失、各種給付は労働保険事務組合である当会を通じて手続きをおこなわなければなりません。従業員を雇用してから遅くとも3ケ月以内に担当者まで連絡下さい(3ケ月を経過すると提出書類が必要)。入社後1ケ月経過しても従業員に交付されるべき「雇用保険被保険者証」及び事業所保管の「資格取得等確認通知書」が届かない場合はお手数ですが必ず当会へ確認をお願いします。雇用保険の資格取得手続がもし漏れていた場合、2年間しか保険期間が遡れないことになっているために従業員にとっては不利益となる場合があります。
業務中に交通事故にあったら
業務中の交通事故で被害にあい労災保険からの給付はどうなるのかという相談が多いので、ある会員さんの実例を取り上げて解説したいと思います。
「会員Aさんは昨年の3月頃現場から会社へ帰る車中後ろから車に追突され負傷しました。警察の立合いの現場検証の結果、相手方の過失割合100%でした。その後相手方の揖害保険会社から治療費、休業補償が支払われましたが、治療費約5ケ月、休業補償で約3ケ月で一方的に打ち切られました。医師の診断ではまだ治療継続ということでした。しかしAさんは仕方なく自分の持っている健康保険で自己負担を強いられるようになり、労災保険での給付はどうなるのかという相談でした。
申請すれば労災保険から給付が支給されます。管轄の労働基準監督署へ第3者行為災害届と交通事故証明書をつけて提出すれば、損害保険会社から休業補償を支給された期間に対して、労働福祉事業団から事故前3ケ月の平均賃金の2割が支給されます。次に打ち切られた後の治療費を労災給付へ切り換え、自己負担した分を返してもらう手続きをします。加えて休業補償を打ち切られた後の分を、労災保険に手続きを申請すれば平均賃金の8割が支給されます。
結果、Aさんの負担分はなくなりました。この手続きをしたことでAさんは「安心して治療が続けられる」と喜んでいました。
/不況下、従業員の賃金を下げたいが・・・
工所は、30年以上の熟練工員さんの頑張りが事業主さんの自慢です。しかしこの不況下、今までの給料を出し続けることが困難になってきました。「もうすぐKさんが60歳になる。この際給料を下げたいが、言い出しにくくて・・・」と相談にこられました。
H鉄工所は、雇用保険に加入しているので高年齢雇用継続給付の制度が利用できます。この制度は、60歳に到達したときに60歳前6ヶ月の賃金を報告して1ヶ月の平均賃金を登録します。60歳以降65歳までに、登録した賃金に対して75%以下に下がった場合、下がった率に応じた額が本人に支給されるものです。
Kさんの60歳前、1ヶ月の平均賃金は39万円。事業主さんは25万くらいに下げたいとのこと。下がった率で支給額を試算してみると1ヶ月32,600円が支給されます。事業主さんは14万円減らすことができ、Kさんは11万円の減給になります。早速Kさんに相談すると「会社が大変なのは毎日の仕事量でわかっていた。リストラされるかと思っていたので、少しの減給で働き続けることができるのはうれしい」と言われたそうです。また年金受給を併せて考えてみるとも。(高年齢雇用継続給付受給者は、年金が調整されて支給されます)
「失いたくない人材なので、制度を利用することで納得してもらえてよかった」と報告の電話をくださった事業主さんの声に安堵の様子がうかがえました。













